こんにちは。
銘柄分析シリーズ第15回目の今回は、ブリヂストン(5108)を取り上げてみたいと思います。皆様の銘柄スクリーニングのご参考になれば幸いです。
はじめに
本シリーズは長期投資に適していると自分が思う銘柄をピックアップして紹介しようと始めたものです。長期投資に適した銘柄の特徴としては、以下の点が挙げられるでしょうか。
- 長期的に業績(売上、利益)が伸びている
- 長期的に株価が伸びている(10年チャートが右肩上がり
- 長期的に増配トレンド(減配していない)
- 稼ぐ力(営業利益率、ROE)が高い、あるいは改善傾向にある
- 財務(自己資本比率、D/E等)が良い、あるいは改善傾向にある
- 平常時は営業CF>>投資CF(特に設備投資が少ない)
- 割高過ぎない
- 参入障壁が高かったり安定した収益を上げ続けられるビジネスモデル
- 過去のトレンドが今後も長期的に続きそう
ただ、上記特徴で銘柄の絞り込みをしていくと、どうしても内需系のディフェンシブ株に偏りがちなんですね。なので、この問題を解消するために景気敏感株も取り上げたいと思い、今回はブリヂストンを選びました。
景気敏感株は外的要因によって業績・株価が上下し易いですが、逆にそれを利用して安い時に買って長期で持ち続ければ、高い配当利回りを期待できます。ポートフォリオの大半を景気敏感株で埋め尽くすことは僕はしませんが、一定の割合で(株価の上下があることは理解した上で)景気敏感株に投資するのはありかなと思います。ただし、投資する時は苦しい時に耐えられる体力があるかどうかを見極める必要があります。重視すべきポイントは「財務」です。
脱線しました。ブリヂストン見ていきます。
銘柄概要
ブリヂストンHPより
ブリヂストンは言わずと知れたタイヤ世界最大手で、時価総額3兆円以上の日本を代表するグローバル企業です。輸送機関連の製造業なので景気に敏感な事業セクターですが、財務が良く個人的に好みの銘柄です。
業績は原材料費や景気の影響を受けます。また、売上の多くを北米で上げていることから、為替の影響も受けます。タイヤって、新車向けよりも交換タイヤの方が利益率が高いんですよね。で、日本ではタイヤ交換の頻度はそれ程多くないですが、国土の広い北米ではタイヤ交換はより頻度に行われます。従って、北米のウェイトは大きいんですね。
外的要因による波はあるものの、タイヤは消耗品で定期的に交換されるため、比較的安定した需要が見込めます。そしてタイヤが無いと車は走れませんから、将来クルマが不要になるか、クルマが空を飛ぶ日が来るまでは、同社ビジネスは安泰だと思っています。
業績
売上、営業利益、当期純利益の推移です。売上、営業利益は15年が最高、当期純利益は14年が最高です。コロナ影響で20年は最終赤字となりました。まあ工場が稼働ストップしたらタイヤ作れませんし、自動車メーカーの工場も止まってたので新車向けタイヤの需要は激減、ロックダウンや外出自粛で移動が制限されると交換タイヤの需要も落ちますので。消費マインドの落ち込みもあったでしょう。人の移動が制限されることなんて戦時中でもない限り中々ありませんから、かなりの特殊要因だったと言えます。まだまだピーク時には劣りますが、21年は回復してくる予想です。
SBI証券より
「稼ぐ力」を表す営業利益率とROEの推移です。製造業は原材料費が多くかかるため、サービス業などと比べると営業利益率は低めになります。また、工場などの固定資産が多くROEも低めに出るため、収益性の指標だけで見ると他の業種と比べる不利になります。その中で、ブリヂストンは営業利益率、ROEともに赤字転落した2020年以外は10%以上の水準を保っていますので、優秀な部類と言えます。
SBI証券より
財務
自己資本比率は徐々に低下していますが、50%台で推移しています。40%以上あれば優良と言われる所、なかなかの高水準です。
キャッシュ・フローの推移です。設備投資が必要になる製造業なので、投資CFが大きいんですが、それを上回る営業CFがあります。フリーCFは概ねプラスで推移しています。優秀ですね。
SBI証券より
株主還元
「配当性向40%を目安」としています。これまでは配当性向20〜40%でしたが、今期から変更されています。株主還元を強化していこうと言うことですね。
配当実績は10年から18年まで9期連続増配、翌19年は増配ストップするも非減配でした。流石に赤字だった20年12月期は減配となりました。ただ、赤字なので無配でも良かった所、160円⇒110円とマイルドな減配に留めています。過去の配当実績を見る限り、安定的な配当を実施したいとの経営陣の意思が感じられます。減配はありましたが、配当は2010年からの10年間で5倍に増えてる訳ですから普通に良いですね。株主還元に積極的な会社だと言えます。
因みに、前に減配したのはリーマンショックのあった09年です。業績・株価と比べると値動きはマイルドですが、配当も外的要因の影響を受けて上下あると言うことですね。
SBI証券より
株価指標
ブリヂストンの10年チャート(株探より)
株価:4,613円(2021年5月13日終値)
PER:12.4倍
PBR:1.51倍
配当:130円(配当利回り:2.82%)
PER的には割安です。ミックス係数(PER×PBR)も18.72と割安水準とされる21を割れています。株価の方は3,000円~5,500円ぐらいのボックス相場が続いています。成熟企業であり株価がほとんど成長していないことを考えると、配当利回りはもうちょっと欲しいですね。財務は固いので、暴落時に拾って長期間保有するのが有効かと思います。
総評
コロナ禍の2020年には赤字転落・減配した様に、景気を始めとした外的要因に業績・株価が左右される景気敏感株です。稼ぐ力を表す営業利益率、ROEは製造業であることを考えると優秀な部類かと思います。財務面も良好です。
株主還元についても、赤字転落した2020年こそ減配しましたが、過去の配当実績を見ると安定的な配当を実施したいとの経営陣の意思が感じられ、株主還元に積極的な会社だと思います。
配当利回りは3%を切っており、もう少し株価が下落して高配当化したタイミングで狙ってみたい銘柄です。
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