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【銘柄分析】トリケミカル研究所(4369)

投資先でもあるトリケミカル研究所(4369)の銘柄分析です。ネオモバで少額投資をしているグロース株ですが、読者の皆様の銘柄スクリーニングのご参考になれば幸いです。

 

銘柄分析は以下にまとめています。ボチボチ更新していきたいと思います。

www.loveyuyu-dividend.com

 

トリケミカル研究所について

ざっくりとした事業内容、投資指標等は以下の通りです。

  • 半導体向け高純度化学薬品が主力の化学メーカー
  • 大手が参入しづらいニッチ製品の少量多品種生産に強み
  • 株価:2,230円(23.05.12終値)
  • 時価総額:725億円
  • PER:17.1倍(過去平均PER:)
  • 配当利回り:1.35%(10期連続増配中)

 

半導体等の成長産業において先端的かつ専門的な顧客ニーズに柔軟に対応して開発・製造を行うことを提供価値とするコンサル型の化学メーカーです。規模や効率が重視される大手化学メーカーが参入しづらいニッチ製品の少量多品種生産にこだわることでブルーオーシャンを開拓。

 

有価証券報告書「ニーズの変化が常に起こる」半導体製造用材料

 

「当社グループは、最先端の半導体に用いられる高純度の化学材料において、技術的な優位性やノウハウを保持していることや、ニッチな市場であることから、現状、競争相手となる企業は少ないものと考えております。」

 

上記は有価証券報告書(22年4月28日)からの引用ですが、なかなか強気な表現ですね。先端半導体における高機能化学薬品分野でこれと言った競合は存在せず。成長市場×競合不在と事業環境は良好に見えますが、事実、ここ数年は高い成長性と付加価値を実現できています。

 

本業では化学を専門とする管理人が色々語っても良いのですが、(投資利益に繋がる様な話はできないので)当社製品などについてご興味ある方は以下URLから会社HPをご覧下さい。これが二桁成長を続けるイケイケ企業なのか?と思えるほど古風なHPで好感(?)が持てますよ。

株式会社トリケミカル研究所 TCLC Trichemical.com

業績

まずは業績から見ていきます。以下は損益計算書(PL)の推移です。

マネックス証券より

続いて利益率とROEの推移です。

マネックス証券より

 

業績の特徴は以下の通り。

  • 売上、営業利益ともに綺麗な右肩上がり。過去5年の年平均成長率(CAGR)は、売上16.2%、営業利益25.0%、最終利益39.8%と高成長。2017年からの5年間で最終利益は5.3倍に拡大
  • 粗利益率41.8%、営業利益率25.7%、ROE24%と収益性、効率性を表す指標も高水準。粗利益率は付加価値の高さを表す。化学メーカーとしてはかなり優秀な部類と言える。なお、優良化学メーカーとの指標比較は後述。
  • リーマンショック以降、2014年まで業績低迷が続いたことには注意。産業のコメとも言われる半導体だが不況に陥れば当然影響を受ける。規模の小さい当社は売上の多くを少数の販売先に依存しており、大手に比べてリスクはより高いと考えられる。

財務

続いて貸借対照表(BS)、直近5年間の推移です。以下、構成比で表示。

マネックス証券より

 

負債・純資産(資金の調達サイド)から見ていきます。

  • 自己資本比率は75%と高い。額としても順調に増えており、利益剰余金が積み上がっていることが分かる。ただしここ1年の自己資本比率の急増(63%⇒75%、額にして126億円⇒213億円)は昨年2月に行った公募増資の影響が大きいので注意が必要。
  • 固定負債12%の大半は長期借入金。

 

資産(資金の運用サイド)です。

  • 現金・預金は80億円(28%)。これまで10~15%と低水準で推移していたが、ここ1年で急増している。公募増資による資金調達を行ったことが要因。
  • 有形固定資産は80億円(28%)。自社で製造を行う化学メーカーにとって必要な工場や機械・装置など。現金の急増で率としては減っているが、額としては毎年増えている。
  • 投資その他の資産は57億円(20%)。大半は投資有価証券で子会社・関連会社の株式。

 

半導体向けの旺盛な需要に対応するため拠点拡充(2020年に台湾工場)、能力増強などの投資をガンガン行っており多額のキャッシュが必要と言うことですね。公募増資の発表以降は株価下落が続いていますが、将来の利益に繋げられるかどうかですね。無駄な資産が少ないスッキリとしたBSと言う印象。

キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの推移です。

マネックス証券より

 

  • 2014年を除いて営業CFはプラスで推移。2017年頃から営業CFの増加が加速している所が素晴らしい
  • 投資CFの大半は有形固定資産の取得によるもの。増大する営業CFと同等か、それ以上の額が計上されている(概ねフリーCFはプラスマイナスゼロかマイナスになる年もあり)。
  • 財務CFはプラスの年が多い。2021年2月の公募増資では49億円のキャッシュイン。

 

プラスの営業CFに加えて財務活動による資金調達を行ってガンガン投資していることが分かります。ただ投資CFを追いかける様に営業CFが増加しており、グロース株としては理想的なCFに見えます。投資が儲けに繋がっている、と言うことです。

株主還元

株主還元です。

マネックス証券より

 

配当利回りは0.92%と低いですが、10期連続の増配を計画しています。配当性向は15.8%と増配余地はあると思いますが、まさしく成長の真っただ中に居る銘柄なので株主に還元せずガンガン投資に回して頂くのが合理的でしょうかね。

優良化学メーカーとの指標比較

最後に優良化学メーカーとの指標比較です。

比較相手は、半導体素材で世界トップ級のシェアを持つ信越化学工業(シリコンウエハ)、東京応化工業(フォトレジスト)、半導体素材に加えて医薬・農薬・動物薬と言った高付加価値品も扱う日産化学としました。総合化学メーカーで、時価総額や売上規模は比較になりませんが、どの銘柄も優良企業です。

 

どの銘柄も優秀ですが、成長率においてはトリケミカル研究所に分があります。東京応化工業は利益率、日産化学は成長率でやや劣りますが、信越化学工業は凄いですね。この規模でまだまだ成長してる訳ですからね。

ネオモバ投資では銘柄数を10以内、基本的に同一セクターから2銘柄は選ばないと言うマイルールを設けていますが、化学セクターはトリケミカル研究所と信越化学工業の二択でした。結果、時価総額、売上規模の小さいトリケミカル研究所を選びました。売上2兆円が4兆円になるよりも、売上120億円が240億円になる方が簡単そうですので。

まとめ

以下、トリケミカル研究所の個人的な評価です(★が多い方が好評価)

成長性:★★★★★

収益性:★★★★★

安定性:★★★☆☆

 

化学メーカーとして成長性、収益性は抜群ですね。成長市場×競合不在の理想的な事業環境であり、今の環境が続けば今後も高い成長を期待できるでしょう。財務安定性は問題ありませんが、技術の陳腐化、栄枯盛衰の激しい業界なだけに現在の成長性・収益性を維持できるのか、今後の動向には要注意と言うことで安定性については減点しました(オール5を付けたくない思惑もあり)。

 

以上、ご参考になりましたら幸いです。