弱小投資家が経済的自由を目指すブログ

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トリケミカル研究所(4369)分析

 

投資先でもあるトリケミカル研究所(4369)の分析です。

既に2バガーになっていますが、まだまだ息の長い成長を見込んでおり引き続きホールドの方針です。毎年分析記事を書いますが、今回は2024年4月26日付の有価証券報告書を基に最新の情報にアップデートしました。

 

過去記事は以下にまとめています。よろしければご覧ください。

www.loveyuyu-dividend.com

 

トリケミカル研究所について

ざっくりとした事業内容、投資指標等は以下の通りです。

  • 半導体向け高純度化学薬品が主力の化学メーカー
  • 大手が参入しづらいニッチ製品の少量多品種生産に強み
  • 株価:4,130円(24.06.21終値)
  • 時価総額:1,342億円
  • PER:36.0倍(過去平均PER:27.1倍)
  • 配当利回り:0.73%

 

半導体等の成長産業において先端的かつ専門的な顧客ニーズに柔軟に対応して開発・製造を行うことを提供価値とするコンサル型の化学メーカーです。特に半導体製造における前工程のCVD工程およびエッチング工程で使用される高純度化学薬品に強みがあります。山梨県は上野原市に本社と主力工場を構えるいわゆる「地方企業」ですが、半導体製造の本場台湾にも連結子会社があります。規模や効率を重視しがちな大手化学メーカーが参入しづらいニッチ製品の少量多品種生産、製造スケール(グラム~トン)や容器仕様に至るまで顧客ニーズへの細かな対応にこだわることでブルーオーシャンを開拓。

 

「当社グループは、最先端の半導体に用いられる高純度の化学材料において、技術的な優位性やノウハウを保持していることや、ニッチな市場であることから、現状、競争相手となる企業は少ないものと考えております。」

 

上記は有価証券報告書(24年4月26日)からの引用ですが、ここ昨年から変わりありません。なかなか強気な表現ですね。先端半導体における高機能化学薬品分野でこれと言った競合は存在せず。当社の参入障壁をよく表しているのではないかと思います。成長市場×競合不在と事業環境は良好に見えますが、事実、中長期的に高い成長性と付加価値を実現できています。ご興味ある方は以下URLから会社HPもご覧下さい。

トップページ|株式会社トリケミカル研究所 (trichemical.com)

 

脱線しますが、本拠地を地方に置きつつ世界と伍して戦っていける様な技術力、高い参入障壁を持つ元気な「地方企業」はついつい応援したくなりますね。トリケミカル研究所(山梨県上野原市)以外ではエラン(長野県松本市)、ナカニシ(栃木県鹿沼市)、マルマエ(鹿児島県出水市)、竹内製作所(長野県埴科郡坂城町)などの「地方企業」に投資しています。機会があれば、これら「地方企業」も分析記事を書いてみたいと思います。

業績

まずは業績から見ていきます。以下は損益計算書(PL)の推移です。

マネックス証券より

続いて利益率とROEの推移です。

マネックス証券より

 

業績の特徴は以下の通り。

  • 2024年は減収減益となったが、売上、営業利益ともに長期的には上昇トレンド。過去5年の年平均成長率(CAGR)は、売上7.6%、営業利益-2.0%、最終利益1.7%と低水準に留まるが、2024年の大幅な落ち込みが要因。
  • 粗利益率36.3%、営業利益率17.3%、ROE9.24%。業績が落ち込んだ2024年も化学メーカーとしては高い水準を確保。化学メーカーとしては優秀な部類と言える。
  • 業績のアップダウンがそれなりにあることには注意。産業のコメとも言われる半導体だが不況に陥れば当然影響を受ける。規模の小さい当社は売上の多くを少数の販売先に依存しており、大手に比べてリスクはより高いと考えられる。

 

2024年1月期は半導体サイクル(シリコンサイクル)の停滞局面でしたので数値的には落ち込みました。これは東京エレクトロンなど日本を代表する半導体関連事業を主力とする企業にも見られる傾向で、シクリカルな側面があるのは仕方無いかと思います。

 

2025年も業績は過去最高を更新する予想にはなっていませんが、長期的に成長していることは間違いないかと思います。成長産業である半導体分野において参入障壁が維持されている限り、長期保有で問題無しと見ています。

財務

続いて貸借対照表(BS)、直近5年間の推移です。以下、構成比で表示。

マネックス証券より

 

負債・純資産(資金の調達サイド)から見ていきます。

  • 自己資本比率は86.5%と非常に高い。額としても順調に増えており、利益剰余金が積み上がっていることが分かる。
  • ただし2021年2月に公募増資を行っている。21.01⇒22.01の自己資本の増加は公募増資の影響が大きい。

 

資産(資金の運用サイド)です。

  • 現金・預金比率は32.9%。昨年より減少したが公募増資による資金調達を行ったこともあり、ここ数年でキャッシュが増加。
  • 有形固定資産は92.6億円(29.1%)で昨年より9億円増。自社で製造を行う化学メーカーにとって必要な工場や機械・装置などを保有している。山梨県南アルプス市に新工場を建設中で、9億円の増加分のうち3億円は建設仮勘定(有形固定資産の完成前に支払い済の費用)。
  • 投資その他の資産は34.8億円(10.9%)。大半は投資有価証券で子会社・関連会社の株式。ただし2024年1月期は関連会社からの配当金入金により投資有価証券の額が減少(何故こうなるのか勉強不足で分かりませんが・・・)。

 

無駄な資産が少ないスッキリとしたBSと言う印象。半導体向けの旺盛な需要に対応するため拠点拡充、能力増強などの投資をガンガン行っており多額のキャッシュが必要と言うことですね。資金調達の方法として増資(エクイティファイナンス)は株式の希釈化と言う観点では既存株主や株式市場から嫌われます(=短期的には株価が下落する)が、リスクテイクする際はエクイティファイナンスが基本と言うことは申し上げておきます(今回の当社の増資について良し悪しを言う意図ではありません)。

キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの推移です。

マネックス証券より

 

  • 2014年を除いて営業CFはプラスで推移。2024年こそ失速したものの2018年頃から営業CFの増加が加速している所が素晴らしい
  • 投資CFの大半は有形固定資産の取得によるもの。増大する営業CFと同等か、それ以上の額が計上されていたが、直近は営業CF>投資CFとなっている。
  • 財務CFはプラスの年が多い。2021年2月の公募増資では49億円のキャッシュイン。ただし直近2年はマイナス。

 

長期的には投資CFを追いかける様に営業CFが増加しておりグロース株としては理想的なCFに見えます。ただし、直近では営業CF>投資CFとなっており事業フェーズの転換点にも見えますので今後の動向には注視しておきたいと思います。

株主還元

株主還元です。

マネックス証券より

 

残念ながら2024年1月期で10期連続の増配がストップしてしまいました。配当利回りも0.73%と低いです。まあ成長の真っただ中に居る企業なので還元よりもガンガン投資に回して頂くのが合理的でしょうかね。

まとめ

以下、トリケミカル研究所の個人的な評価です(★が多い方が好評価)

成長性:★★★★☆

収益性:★★★★☆

安定性:★★★☆☆

 

化学メーカーとして成長性、収益性は抜群ですね。成長市場×競合不在の理想的な事業環境であり、今の環境が続けば今後も高い成長を期待できるでしょう。ただ、昨年と比較して収益性がやや低下したため収益性を1点減点して★4としました。財務安定性は問題ありませんが、技術の陳腐化、栄枯盛衰の激しい業界なだけに現在の成長性・収益性を維持できるのか、今後の動向には要注意と言うことで安定性については★3としました。

 

以上、ご参考になりましたら幸いです。