投資先でもあるヤーマン(6630)の銘柄分析です。
23.4期の有価証券報告書が出ましたので、その内容をもとに書いてみました。
過去の銘柄分析は以下にまとめています。ボチボチ更新中です。
ヤーマンについて
ざっくりとした事業内容、投資指標等は以下の通りです。
- 美顔器をはじめとした美容・健康機器メーカー(業種:電気機器)
- 工場を持たないファブレス企業で企画・開発・IP・サービスなど付加価値の高い企業活動に経営資源を集中投下
- 株価:1,039円(23.08.10終値)
- 時価総額:667億円
- PER:13.1倍(過去平均PER:20.6倍)
- 配当利回り:0.82%
あくまで個人的な仮説ながら、当社の提供価値は
- 美容業界において大型マシンや通院でしか実現し得なかった効能を、機器を小型化することで家庭でも実現可能にした
- 普段の何気ない生活習慣を美容習慣に変えた
ことだと考えています。基盤(コアコンピタンス=競争優位の源泉)となるのは測定、波形(光、熱、超音波)、小型化、汎用化などの技術・ノウハウとヤーマンブランド。コアコンピタンスに積極投資、徹底的に磨きをかけ、付加価値を高め新市場を創出しようとする意識が非常に高い会社だなと思っています。
事業拡大の方向性としては海外展開です。2015年に中国市場に本格参入。その後中国でブランドを確立し、業績が大きく拡大しました。2015年対比で売上は3倍(134億円⇒430億円)、営業利益は10倍(6億円⇒61億円)に拡大。直近で中国景気が落ち込む中、今後の成長は米国での普及拡大としています。2023年7月にウェアラブル美顔器でFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を取得しましたが、これが業績拡大に繋がるのかどうか要注目だと思います。なお美顔器はアメリカでは効能、リスクに応じて医療機器に分類される可能性があり、その場合はFDA認可が必要とのこと。
業績
まずは業績から見ていきます。以下は損益計算書(PL)の推移です。
マネックス証券より
続いて営業利益率とROEの推移です。
マネックス証券より
業績の特徴は以下の通り。
- 業績の振れ幅が大きい。2014~2015年が業績の底で、それ以降は2020年(コロナ影響?)を除き売上、営業利益とも上昇トレンド。過去5年の年平均成長率(CAGR)は、売上13.3%、営業利益2.6%、最終利益2.9%。直近は利益面で伸び悩み。
- 付加価値の高さを表す粗利益率は60%前後で推移。製造業としては高水準。
- 振れ幅が大きいものの、2023年4月期は営業利益率14%、ROE16%と優秀な部類。ただし業績低迷時は1ケタ台に落ち込んだこともあり。
業績の振れ幅が大きいものの悪い時でも黒字を確保しています。また業績がグッと落ち込んだ2014~2015年以降は上昇トレンドに見えます。営業利益率、ROEも綺麗な右肩上がりではありませんが、2016年以降は2ケタ台と高水準で推移しています。前述の通り、中国市場に本格参入した2015年ぐらいから業績が大きく拡大していますが、中国の経済成長が停滞する中、更なる成長をしていけるのかどうかが課題ですね。営業利益率は将来的に20%を目指すが、直近は積極的な成長投資を行うことから10%以上を目標としています。
財務
続いて貸借対照表(BS)、直近5年間の推移です。以下、構成比で表示。
マネックス証券より
負債・純資産(資金の調達サイド)から見ていきます。
- 23.4期末時点の自己資本比率は82.1%と非常に高い。純資産の大半は利益剰余金で同社が順調に利益を積み上げてきたことが分かる。
- 有利子負債はあるが、それを大幅に上回る現金・預金を保有しており実質無借金。
資産(資金の運用サイド)です。
- 現金・預金が52%。資産の約半分を現金・預金で保有するキャッシュ・リッチ企業で実質無借金。
- 棚卸資産は構成比率、額ともに増加傾向。
- ファブレス企業のため有形固定資産は全体の1.8%と低水準。
棚卸資産の増加に関しては、直近においては部材の調達難などの環境により受注生産から計画生産に切り替えたとの説明があったかと記憶していますが、今後の推移には注視しておきたい所。
PLの推移で見てきた様に、業績の好不調が割とはっきりしているだけに鉄壁の財務安定性ですね。PL、BSの特徴は過去に分析した任天堂と似ているかなと思います。任天堂は過去に分析記事を書いていますのでよろしかったらご覧下さい。
キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの推移です。
マネックス証券より
2011年を除いて営業CFは安定的にプラスで推移。基本的にフリーCFがプラス(営業CF>投資CF)で推移しており良いですね。昨年6月に発表された中期投資計画では23.4期~25.4期で140億円の成長投資を計画。直近で年間の営業CFが40億円程度であることを考えると積極投資と言えます。
株主還元
株主還元です。
ヤーマン_第49期決算補足説明資料より
特別配当、記念配当があるので振れ幅が大きい様に見えますが、普通配当ベースでは減配していませんね。まあ見方によりけりですが、積極的に成長投資を行っている段階の企業なので配当目当てで投資する感じでは無いと思います。配当性向は10%台と低水準です。
株主優待は当社直販Webサイトで使える金券になります。長期保有特典が導入されており、MAX5年まで保有期間が長くなるに応じて額面がアップしていきます。本年7月に開催された当社の株主総会に参加しましたが、株主優待に関しては、当社製品の認知度向上のためにも継続していきたい旨、社長さんからコメントがありましたよ。
株主優待制度のご案内 | ヤーマン株式会社 (ya-man.co.jp)
まとめ
ヤーマンの個人的な印象です(★が多い方が好評価)
成長性:★★★☆☆
収益性:★★★★☆
安定性:★★☆☆☆
成長性は中国経済が減速する中で米国の成長見通しが未だ見えないのでニュートラル。収益性は現状で利益率、ROEともに高水準なので高め。安定性は好不調の波が激しいことと中国の先行きを懸念して減点としました。
色々と評価が分かれる所かもしれません。財務は盤石なので、撤退基準(個人的にはアメリカでの普及拡大が成功するか)を決めた上で優待権利の最小単元を長期保有する分には有りかなと思います。過去平均PERと比較しても割安水準にあります。
以上、ご参考になりましたら幸いです。
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